道化が見た世界

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話がつまらない先輩男子との付き合い方

いますよね。いるんですよ。所属した共同体内に必ず一定数は存在する彼ら、「つまらない系先輩男子」。彼らの何が面倒くさいかと言うと、まず、当たり前ですが先輩だから自分より年上であり、年功序列の価値尺度から、「建前上」は彼らのことを敬わなければならないところです。これが自分と同期の人間、あるいは後輩であったら、そのつまらなさをからかったり、可愛く見えたりもするんですが、いかんせん、先輩に「いや〜、にしてもつまらないですね」と本音を吐露することは困難を極めます。


かといって、適当に流していると(そもそも話がつまらないので、その様な態度を取ることは論理的必然なんですが)、「お前、ノリ悪いな」や「お前、態度悪いな」等々、彼らお得意の「独り善がり説教」がスタートします。彼らの特徴は、「年齢差」を唯一無二のモノとして神聖視し、下手に出ざるを得ない後輩の立場をいたずらに利用しながら、短絡的な定式で「俺年上故に偉い、お前年下故に従え」という脳天パァな価値観を押し付けてくる点です。


確かに、組織内で一定の秩序を保つ為には「年齢差」が有意に機能するでしょうし、ある程度はその慣行に従うべきです。が、そのシステムを恣意的に用いて、つまり、彼ら「つまらない系先輩男子」の様に、自らのオナニーを後輩達にひけらかすことは、愚の骨頂、トップ・オブ・ザ・ナンセンスの所業であります。


そして最も面倒くさいのは、彼らは彼ら自身を「面白い人間」だと信じて疑っていないところです。ですから、冒頭で述べた様に、私達に「いや〜、にしてもつまらないですね」とでも言われたら、おそらく憤死寸前の精神錯乱を起こして右フックが飛んで来るかもしれません。皮肉なことに、その光景こそが唯一彼らの「面白さ」を体現している、と言ってもいいでしょう。


しゃべる話は驚異的につまらなく、説教や自慢話に終始する、そんな彼ら「つまらない系先輩男子」と付き合っていくには、どうすればいいのでしょうか。今回は、その処方箋を提示することが目的です。また、彼らの存在を知ることで、「ああ、コイツは『ツマ先(つまらない系先輩男子)』だ」とゲーム感覚で感知することができるようになるでしょう。


お気づきの方も何人かおられると思いますが、語りべである私自身も、大学四年生であり、分類すれば「つまらない系先輩男子」になり得る訳です(いや、もうなっているかもしれない)。ですからこの記事には、必然的に私自身の自戒をこめています。私の場合は、「先輩、今、面白さの最低水準を大幅に下回ってますよ。今でも充分ツラいですけど、この状況が続くようでしたら家に帰ります」と、後輩に指摘してほしいと思います。後輩がそのように気兼ねなく指摘できる信頼関係を築くことも、先輩の役割だと言って良いでしょう。


さて、若干話が逸れましたが、実際の付き合い方(対処法)として、どうすればいいか。その消極策としては「聞き上手」に徹し、積極策としては「徒党を組んで囲い込み運動」が挙げられます。後者の策に、いささか黒々としたニュアンスを感じてしまうかもしれませんが、まあ実際に黒いので仕方がありません。


ではまず、前者の消極策「聞き上手」を解説しましょう。といっても、ほとんどの人がこの策を講じておられると思いますので、解説は不要でしょうか。聞き上手になることで相手を気持ち良くさせ、その結果として実質的利益(なんか買ってもらったり)を求める人は、こちらの策を用いるでしょうし、その意味では消極策ではないかもしれません。


私が考える聞き上手の鉄則として、(1)姿勢を正し(2)適度にアイコンタクトをして(3)かつ適度に相槌を打ちながら微笑みかけ(4)小気味良い質問を投げ掛ける というものがあります。因みに、私が「つまらない系先輩男子」の「聞き上手」に徹している時は、彼らの隙を盗みつつ、口をだらしなく開きながら遥か虚空を見つめています。


最後に、後者の積極策「徒党を組んで囲い込み運動」ですが、これは「年齢差」という力の構造を、「数」の多さによって逆転させるといった、画期的かつ野心的な試みです。簡単に言ってしまえば、「つまらない系先輩男子」の高慢かつ勘違い千万な振舞いに対し、比類なき迷惑を被った人達で(発想が中二ですが)「対○○軍事同盟」なるものを創設します。団結権を行使する労働組合みたいなもんです。


そして、組織全体にその先輩のネガティブ・キャンペーンを実施するなり、被害の実体を訴えるなりし、兎に角、多数派を形成し得る「数」を味方につけなければなりません。先輩に対して負の印象を持つことは暗黙的にタブー視されていますから、最初に声を出して異議を唱えることは、大変勇気のいる行為です。また、たとえば意図せずもその心情を吐露した相手が、そのつまらん先輩側の人間(こいつもしょーもない人間でしょうが)だった場合に、コチラが劣勢に立たされる危険性を考慮しなければなりません。自分の「仲間」になり得る人間を取捨選択し、草の根運動を展開していきましょう。


多数派を形成し得る仲間を獲得できたら、もうあとはオオッピラに気持ち良く、「あの、先輩に初めて会った時から、ずっーと心の内に秘めていた思いがあるので、今、言わせてください。・・・・・・お前、超つまんない!!!」と飲みの席で言ってやりましょう。


さて、以上二つの具体策を挙げてみましたが、高慢な先輩男子に対する敵対意識は、どちらかというと同性である後輩男子に多い気がします。積極策を講じなければならないほどの手遅れな人間(つまり、その人間を排除することによって、共同体の調和を復元する)は流石になかなかいないとは思いますが、高慢な先輩に対して抗うことは悪ではなく、むしろ善である、という認識を胸を張って持っていてほしい。というのが、私の後輩諸賢に対する差し当りの思いであります。