道化が見た世界

エンタメ・エッセイ・考察・思想

ボクと雨と洗濯物

どうも、ご無沙汰しております。

30歳独身実家暮らし彼女なし、日々の楽しみはママとの雑談、でお馴染みの、僕です。(ホストでお客さんの席に挨拶して座る際に、他のホストとの差別化を図る為に、失礼しますからの超絶大声自己紹介をかますのですが、この自己紹介が「いやママってマザコンかよ(笑)」というお客さんのツッコミを誘発しやすく、最もウケの打率が高かったので定着しました。ただシンプルに真顔で「30で実家暮らしはヤバい」とハタチそこらのうら若き女子に言われ引かれた時は、そのままシュンとなり、席でなにもしゃべれなくなることもままありました。)

 

そんな筋金入りの実家暮らしの僕が未だ経験したことのないこと、それは雨が降ってきた時に急いで洗濯物を取り込むという行為です。一人暮らし経験のあるインデペンデントな個人はまあ経験あると思います。他にやってくれる人がいませんからね、当然ながら。というか、よくよく考えたらそれ以前に僕は、洗濯物を回す、干すという、人間であれば生活を営む上で誰しもがすべき当然の行為もほぼほぼ経験したことがありませんでした。(生まれてきてしまって)すみません。

 

しかし先日たまたま、その機会が訪れました。その日はママが外出中で、家を出る際にそれとなく、「天気わかんないから、雨降ってきちゃうかも」的なことをほのめかしてたなあくらいの認識が、僕の頭の片隅のわりとはじの方にありました。なので、そもそも庭に洗濯物が干してあるということもおぼろげで、不確かな認識でした。

 

昼過ぎ頃、僕が特にやることもなくリビングのソファでふんぞり返って一人テレビを観ていると、屋根にポツ、ポツと微かに音がしました。

 

 

 

、、ん?

 

 

 

今までほぼほぼ洗濯物を回したこともなければ干したこともない僕の頼りない直感、これは雨が降ってくる、そしてもし洗濯物が干してあるのだとしたら全部濡れてしまってとんでもないことになってしまうという危惧、浮かぶ悲しむママの顔、これはアラート発令待った無し、気づいた時には僕は庭に向かって疾走していました。

 

駆けつけた現場には数多の家族の洗濯物、その数に軽いめまい、そして先ほどよりも確実に増してきた雨足、洗濯物を取り込むという初めての経験を、今、他の誰でもない僕がしなければ、洗濯物が全滅する、これは一分一秒を争う時間との戦い、求められるのは迅速さと正確さ、生ずる責任感と使命感、全ての洗濯物を救わなければならない。

 

この状況はまさに救世主の初陣と言ってよく、僕は一人「ナポレオンにも初陣はあった」とのたまいながら天を仰ぎ、解き放たれたドラゴンの火炎弾(雨)から逃げまとう民衆(洗濯物)を救い出すナイト(僕)が如く電光石火のスピードで洗濯物を取り込んでいきます。

最初はハンガーから一つ一つ洗濯物を取り外し、それを腕に掛けて回収していましたが、それだとスピードが遅く間に合わないと判断し、とりまごと持ってって取り込んでから処置するという転換、靴下とかいっぱい洗濯バサミでまとまって干してるやつもとりまごと持ってって取り込んでから処置するという転換、地面に洗濯物が触れないように気持ち上めで持ち運ぶという転換、大胆でありながらも繊細な状況判断、手前味噌ながら、

 

 

 

初陣にしては機転が効いている

 

 

 

とひとりごち、自画自賛ながら、マルチタスクとかもわりとできるタイプの脳味噌してるな多分などという自己評価が去来しつつ、見事無事全ての洗濯物を取り込むことができました。使命を果たした達成感に満ち溢れながら、室内でハンガーの取り外し作業などをして一息ついていると、ふと、あっ〜ヤバい、と冷静に思いました。

 

 

 

ヤバい、

 

 

 

これめちゃくちゃホメられるやつだ。

 

 

 

洗濯物すらろくに回したことない息子が、雨に濡れて全滅する運命にあった洗濯物を己の判断で機転を効かせて全て救い出したんだもの。意外性ナンバーワン、サプライズ救世主なんだもの。すぐさまLINEで洗濯物を全て取り組んだことを報告しましたが、なかなか既読になりません。

 

 

 

ママ!!はやく!!

はやくめちゃくちゃホメて!!

 

 

それでもなかなか既読にならないので、ママこれはもしかして車で事故ってしまったんじゃないかとあらぬ不安に駆られながら、もしそうだとしたら、僕が思い描くめちゃくちゃホメられ未来は幻の未来になってしまう。もしあの時、ママが生きて帰ってきてたらどういう感じでホメてくれてたんだろうと一生考えて、過去に生きる亡霊になってしまう。

 

 

 

絶対に生きて帰ってきてほしい

 

 

 

そう切に思いながら、僕はひたすら洗濯物を畳むのであった。