道化が見た世界

エンタメ・エッセイ・考察・思想

講義ノートの借り方

試験日が近付くにつれて、大多数の不真面目な大学生が我先にと求めるモノは、「講義ノート(レジュメ)」であります。大学生とは往々にして講義に出席しないものでありますが、そこで標的になる人種は「真面目に出席して講義ノートをとっている人」です。


真面目な学生からすれば、つまらない講義が織り成す拷問的苦痛を受けながらも(面白い講義も稀にありますが)仕方なく板書している訳ですから、自分が自力でとったノートというのは何物にも代え難い、プレシャスな品なのです。


そのmy precious thingを、何の臆面も無く、さも当然だろと言わんばかりの高慢さで「ねぇねぇ〜この講義全然出て無かったからさ〜、そのノートコピらせて?」とせがまれた日にゃ、「まァ取り敢えず歯ァ噛み締めよっか」と勧告せざるを得ないでしょう。


しかし、その殺意の勧告を掻い潜らなければ、講義ノートは入手できず、結果、単位を落とす羽目になってしまいます。講義に出なかった怠惰な学生が悪い、自業自得である、という声も聞こえますし、それこそごもっともな正論ではありますが、



ちょっと待ってほしい



確かに、不真面目で怠惰な学生の自業自得であるという側面もありますが(というかその面しか無いですけど)、そこで話を終えてしまうのは何か勿体無い気も致しますので、今回私は、いかに他者から講義ノートを借りることが出来るか、というのをパターン化して分析解説してゆきたいと思います。


「相手の行動に影響を与え、自分の望み通りの結果を得る」為(ここでは、他者からノートを借りること)には、恫喝・強制命令・報酬・説得・魅了の5種類ぐらいの方法があるんですが、これらのパターンをそれぞれ適応して以下に詳述していきたいと思います。全てのシチュエーションは、「真面目な学生を前にしての発言」ということになります。


【恫喝】

(1)弱者の恫喝
「貸してくれなかったら、今すぐこの場で絶命します!!」
(片手で形作った銃を自分のこめかみに添えながら)


(2)強者の恫喝
「俺、あのコト知ってるよ?ノート貸してくんなかったら皆にあのコト言っちゃうよ?」
(虚空を見つめながらシタリ顔で)


【強制・命令】

「貸せ!!いいから取り敢えず貸せ!!」
(白目を向いて必死さをアピールしながら)


【報酬】(※最も現実的)

(1)昼飯
「昼飯おごらせていただくんで、もし宜しければ貸してください」
(可愛い子orイケメンをターゲットにして借りれば一石二鳥!!)


(2)他の講義ノート
「他の講義で出てるのってありますか?それと交換する形でも良いですか?」
(代替の講義ノートの方も借りてしまえば大丈夫です)


【説得】

「わたくし、このままだと単位不足で留年確定してしまうんです。私には常軌を逸した暴君の父君がおりまして、彼が言うには『留年以外なら何しても許す』だそうで、私は今まさに、それ以外ではない『それ』をピンポイント実行しかねない窮地に立たされています。治外法権化した我が家に舞い戻った瞬間デリートされる危険から身を守る為にも、今こそ貴方のノートが必要なのです。どうか、私の生命を救ってください。」
(涙を流して土下座で額を床にめり込ませながら)


【魅了】

「ねぇねぇ、ノート貸してくんない?」
向井理のお面をかぶりながら)



以上、見てきたように、ノートを借りるにしても多種多様なアプローチの仕方があることが分かりました。貸す側―借りる側という、構造的な上下関係もありますし、恫喝・強制命令の手段などもっての他ですが、謙虚かつ低姿勢かつ慎ましい敬語を駆使して懇願すれば、もしかしたら、心優しい真面目な学生は、私達に救いの手を差し伸べてくれるかもしれませんね。