道化が見た世界

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ファルス的会話講座(1)

◆会話空間の基本的認識
「会話」とは、話し手である主体、聞き手である主体がペアとなって初めて成立します。ここでは、話し手が喋ること(act)と、聞き手がそれに反応すること(react)によって、その連続性が会話空間を生み出します。つまり、act-reactの相互作用によって会話空間は成立するのです。


ファルス主体は、この相互作用を注視し、空間的ダイナミズムを追求しなければなりません。つまり、act-reactの両サイドにおいて力を発揮しなければ、その空間的芸術性は萌芽しないのです。


その意味で、ファルスは、話し手としての力量は無論必要になりますが、更に聞き手としてのそれも求められることになります。


会話において話し手・聞き手を担うことは、私達が無意識に成していることですが、そこに「注視」することはなかなかできているようでできていない現状があります。


たとえば初対面時に会話が途切れてしまうといった現象が、まさにそれを端的に表しています。会話が続かず途切れてしまうということは、act-reactの会話空間の破綻とも言えるのです。


ファルスは、この空間をどれだけ有機的に維持し、彩どり、かつ、拡大を図れるかに全神経を傾注します。


「人と人との会話を、空間として捉える」この基本的認識をもとに、ファルスはその力を可能な限り拡大しなければなりません。次号に続きます。