道化が見た世界

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ウケる為の心構え STEP3

ウケる為の心構えの最後を飾るこのタームは、かなり難易度の高いものになります。それは、意識的に「周囲の笑いに対して敏感になる」ことです。つまり、電車内やレストランで会話をしている人達や、大学のサークルの友達が喋っている場面でも良いですが、その人が喋っている内容に耳を傾け、自分自身の笑いのモノサシで面白いか否かを判断するということです。


僕達は往々にして、この人は面白い、面白くないと言った判断を無意識のうちにしていますが、それを意識的に行い、更にそのテリトリーを広範囲に拡大することが重要なのです。その為には、異常なまでの笑いへの執着心が根底に無ければいけません。その点が、冒頭で言ったように難易度が高い、たる所以なのです。


僕達が、他者の人格を推し量る時、そこには様々な基準(モノサシ)が存在します。その数あるモノサシの中で、笑いのモノサシのみを中心にそえ、その人間の人格を推し量ることが、笑いに全てを賭けて生きる人間に不可欠な要素なのです。これは、悪く言ってしまえば、笑いのランクを付ける、序列化する、ということです。この現象が最高点に達してしまうと、その人の人間性を笑いオンリーで判断してしまう、といった状況になってしまいます。


つまり、この人は面白くないから駄目な人間だ、っと言った具合に。この究極的事態を避けつつも、果敢に笑いへアプローチしてゆく人間こそが、真に「面白い人間」なのだと、僕は思います。笑いを志す人間には、少なからずこの様な傾向があるので、社会の中での窮屈さを常に感じなければいけません。何故なら、自分よりもランクの低い笑いを目の当たりにしてしまった場合、違和感を抱き、その場に調和することができないからです。


そして、周囲の笑いに敏感になるということは、自分よりランクが上である、と判断した笑いのスキルを持っている人間にも、敏感になるということです。運良く、その様な人間に出くわした場合には、すぐさま友達になって、彼の持っているスキルをどんどん奪ってしまいましょう。


これを行うことによって、大幅なスキルアップが望まれます。自分よりスキルが高い笑いに出くわした場合には、潔く降伏してそれを自分に取り入れることを最優先してください。彼が持っているスキルを全て吸収することができれば、ランクの高かった彼も自分と同等の立ち位置になり、いずれは追い越すことも可能です。


よって、自分が面白くなる為の最大の近道は、「面白い友達を作る、そして、その人と積極的につるむ」という事が言えるでしょう。その人に遭遇するか否かは、全て運です。自分より笑いのランクが低い人間が周りに蔓延っている場合は、不運であるとしか言いようがありません。ましてや、勘違いして講釈を垂れる人間が現れた時には、絶望の果てに、死にたくなることでしょう。しかし、それも仕方がありません。世の中は不条理に満ちていますからね。全ては運なのです。


ということで、前半からいきなり話が感情的になってしまいましたが、このSTEPでの要点をまとめると、「笑いのアンテナを常に張り巡らせ、ランクの高い人間からは積極的にスキルを吸い取ろう」ということです。そして、皮肉なことに、自分のランクが相対的に高まるにつれて、世の中はより一層生き難くなってしまいます。何故なら、自分のランクが高くなることで、その分だけ、自分よりも下位ランクの人間が増加することになりますからね。これも、笑いに全てを賭ける人間の宿命なのかもしれません。