道化が見た世界

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乙女の頭をポンポンすること

私には、かねてからの疑問がある。それは、「女性が男性に頭をポンポンとタッチされると漏れなく胸キュンしてしまう」といった不可解な現象である。


この現象は統計学的観点からも実証されていることであるが、実際に私は合コンの場で、とある女性に質問してみた。女性は頭をポンポンされると胸がキュンキュンしてしまうのか、と。彼女は瞳を輝かせながら、それは勿論。その日を境にその人を意識してしまうかもしれませんわ、とだけ答えた。私は慄然とした。


いや、彼女が括弧付きで(ただし、好意を抱いている人に限る)と大前提として掲げているのは流石の私にだって理解できる。


私は何も、ポンポンされたぐらいで胸キュンしてはならない、と世の女性諸賢を糾弾している訳では無い。むしろ、私が糾弾するのは世の男性諸賢である。


第一に、私は「頭をポンポン」といった軽度のスキンシップでさえも「唾棄すべきハレンチ行為」として見なすピュアな青年である。


つまり、私が絶対悪としてみなす、頭をポンポンする行為は(以下省略して、「絶対悪ポンポン」と記す)、「彼氏彼女、あるいは夫婦といった親密な間柄(そうでなくとも、それ相応の間柄)では無いにも関わらず、縦横無尽に乙女の頭をポンポンするハレンチ野郎」と定義できる。


私が何にもまして絶対悪ポンポンを許せないのは、その男は「愛情の表出として」乙女に頭をポンポンしている訳ではない、という根源的な問題があるからである。


彼は何故、女性の頭をポンポンするのか?それは、その行為を行うことによって、その女性が自分に好意を抱くであろうことを既に知っているからである。それは彼女を思うが故に自然と表出した愛すべき行為では無く、統計学的観点によって裏打ちされた打算的な行為なのである。


私が思うに、彼氏彼女・夫婦といった親密な間柄になれば、自然と、頭ポンポンという行為は表出するのだ。これを「善良ポンポン」と定義しよう。そして、その「善良ポンポン」こそが、本来の頭ポンポンのあるべき姿なのである。


絶対悪ポンポンを行使する人間は、十中八九、自分に自信がある人間である。つまりナルシストである。彼は自分がその行為をなすことで女性が喜ぶことを知っているのである。それ故に、なんのためらいもなく、一抹の恥じらいもなく、ポンポンポンポン、狸が腹を叩くが如くポンポンするのである。私は、その自信に満ち溢れた醜悪な面を、渾身の力でポンポコしたい。


しかし、最も難しい問題は、そのハレンチ・ナルシストに女性が好意を抱いていた場合である。そうなると、私の理論もどこ吹く風であり、変な奴がなんか言ってるんだけど、であり、彼らは二人で完結的な世界を構築する。いやはや、愛の力は偉大である。


しかし待ってほしい、女性諸君。貴女達は、彼への愛を以て、彼の慢心を許すのですか。彼の自尊心を、自惚れを、更に強固なものへと作り変えてしまうのですか。


貴女は彼への為だと思って言わなければなりません。「私の頭にホコリでも付いてましたか?」と言わなければなりません。それが彼をハレンチ・ナルシシズムから救う唯一の方法なのです。そして、気付いてほしいのです。絶対悪ポンポンを行使せず、常に善良ポンポンを志向し、日々生き続けるピュアな青年の存在を・・・。