道化が見た世界

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武勇伝系男子

昨今では、絶滅危惧種に指定されている希少価値の高い「武勇伝系男子」の生存を、私は最近大学キャンパスの喫煙所で確認した。


武勇伝系男子とは、自分の若気の至りである痛ましいエピソード(そのジャンルは軽犯罪やイジメ、暴力など多岐にわたる)を、なんの恥じらいも無く、むしろ誇らしげに自慢して悦に入る、手のつけようがない、手遅れな人種の総称である。


彼らの絶滅危惧種たる所以は、一般人のほとんどは慎ましく分別があるからであり、仮に武勇伝なる逸話があったとしても、それを恥ずべき愚行として認識しているからだ。


そして、これは私個人の義憤に過ぎないが、コミュニケーションの場で「自慢」をするということは、一番やってはならない、特級の愚行なのである(しかし、文脈的に適当であれば、自慢をしても良い時もある)。男性諸氏にこの様な傾向が少なからずあるのは確かで、もし自覚しているのなら即刻辞めるべきである。


「コミュニケーションはサービスである」とする、笑いのパイオニア水野敬也氏が掲げる大前提と照らし合わせても明らかであるように、自分が一人勝手に悦に入り、おめでたいアヘ顔を衆目の元に晒すことは、拭いがたい黒歴史の始まりを意味する。あまつさえ、「自慢すべき事柄」さえも錯誤している彼らは、最早「歩く黒歴史」といっても過言ではあるまい。


私が見た武勇伝系男子は、おそらく新入生で、彼の男の先輩と二人で煙草を吸っていた。


「新歓って、先輩が無理やり飲まそうとするから嫌なんっすよねえー。盛り上げ方もつまんねえし。俺ああいうことされるとマジ殴りたくなるんすよー。俺って案外すぐ手とか出しちゃうんでー。」


私はこの原初の一撃で、彼が「それ」であることを絶対的に確信し、これは早急に保護せねばなるまいと思案した。


「だって俺、高校で同じようなことされた時、裏拳でそいつのこと殴って鼻血出させましたからね。俺って、そっちの人なんすよ。まじで社会不適合者なんすよーアハハハ」


先輩「そー、そ、それはヤバいねー、ははは・・・」


私はその光景を見るにつけ、まだこういう人種がいるのだという純然たる驚きと、彼と同じように中二病の烙印を押されることがあるならば、私の方がいくぶんマシな中二病患者であると自信を持って断言できると思ったのだった。